親愛なる小林啓様。

さくら学院とBABYMETALの制作スタッフの謎を紐解く

ゆよゆっぺの軌跡(その2)

(その1)からの続き

ボカロPとして活動開始

高校卒業(2008年3月)の直前にVOCALOID(以降ボカロ)と出会い、2008年9月にニコニコ動画(以降ニコ動)へ初投稿。その後2009年1月に公開した「Hope」で大きな注目を集めるようになります。

その頃は鬱屈としてましたね。高校卒業前に友達からボカロの存在を教えてもらって、数ヶ月くらい、ニコニコにすごい中途半端な曲を投稿したりもしてましたね。そしたら、ある日『おまえ本気出せよ』っていうコメントがついてて、それでカチンときて『My little hart』っていう曲をガチでつくったらそこそこ反響があったんです 

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初公開となった「My little hart」(2008年9月11日投稿)

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注目を集めるきっかけとなった「Hope」(2009年1月22日投稿) 

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時期としては、以前拙稿(EHAMiC氏の項)でも記しましたが、2007年に初音ミクを搭載したVOCALOID2が発売され2008年頃より、続々とニコ動に公開されボカロブームが起こり始めの時期でした。但しバンドシーンからの参入という例は少なかったものと思われます。ゆっぺ氏はニコ動コミュニティの中でも独特の存在として評価されていきました。

音楽のジャンルは、エモ・ロックの一種である「スクリーモが中心。本来、シャウトには向いていないVOCALOIDに、独自の調声方法でスクリーモを歌わせ、その歌声に度肝を抜かされたリスナーが続出 

因みにニコ動のユーザー名ともなっている「ゆよゆっぺ」というアーティスト名はこの頃から名乗り始めたようです。

──ゆよゆっぺさんの名前の由来を教えてください。

ゆよゆっぺ:それ聞いちゃいますか?くだらない上に、若干長くなりますけど…。パソコンの前に座ってた時に、僕たぶんムシャクシャしてて、「もう知らんわー!」と思ってキーボードをブワーって叩いたら、『xxxxxxxxxゆよゆっぺxxxxxxxxx』って。そこまでは全然日本語になってないのに、そこだけ綺麗に「ひらがな」で「ゆよゆっぺ」ってなってて、これだなと。それからもう6年位経ってしまいました。

https://japan.steinberg.net/jp/artists/sound_roster/yuyoyuppe.html

 

同人サークルでの活動

ボカロシーンは、漫画・アニメ・ゲームのファン層が培ってきた同人文化と親和性が高く、ゆっぺ氏のボカロ作品は、同人系の流通ルートに乗って拡散していくことになります。主なルートとしては、当時年3〜4回開催されていた「ボーマス(THE VOC@LOiD M@STER)」というイベント(即売会)でした。

主催は、同人イベント情報サイト最大手のケットコム。主にCDや同人誌を頒布するサークルが多いものの(中略)本よりCDのサークルの方が多いことも珍しくなく、これは同人イベントとしては極めて異例(中略)基本的に年に3~4回(2017年は2回の見込み)と、いちジャンルのメインイベントとしては比較的頻繁に開催されている

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2009年11月(第10回)開催の様子

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ゆっぺ氏はここで自主制作CD販売を積極的に行い、インディーズ活動ながら比較的潤沢な活動資金を得ていたようです。

過去に2枚のソロ作品を発表、どちらも手売り、即売会にて約2000枚を売り上げたという実力を持っている。

特集: ゆよゆっぺ - OTOTOY(2010年10月27日の記事)

ちなみにCD2種で売上2,000枚は売上では200万円(@¥1,000×2,000枚=¥2,000,000)CD制作の直接的な原価やジャケットアートワーク等を手掛けた「絵師」さんの取り分などを考慮しても50%以上の利益率だったんでは?と想像してます。

この「楽師」「絵師」等で構成される制作チーム(及びボーマス等における販売チーム)を同人サークルと呼び、ゆっぺ氏は動画プロデューサーのmepla氏と共に「Draw the Emotional」という同人サークルを主催していました。

 ボーマス以外にも、コミックマーケットでの販売(手売り)、その他同人系通販サイトでの委託販売、後には全国のTSUTAYA店でのレンタル/セルCD取扱いも始まり、ニコ動での再生回数に応じた収入もあったはずです。

Hope』というボカロ曲が2009年にニコニコでヒットして、村田さんにも出会って、その翌年にはもう東京で一人暮らしを始めた頃でしたね。ボカロPとしてCDつくってコミケで売って軍資金を蓄えてました。 

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ゆっぺ氏自身(Draw the Emotional)名義の作品(アルバム、EP)は恐らく以下の通り。これ以外にも各社インディーズ/メジャーレーベルが企画したコンピレーションCDなどに多数参加をしています。

  • 『Solitude Freak』(2009年9月6日)ボカロ、オリジナル曲集1st
  • 『For a sick boy』(2010年2月7日)ボカロ、オリジナル曲集2nd
  • 『I'm』(2010年5月9日)ボカロ&インスト他の企画アルバム、オリジナル曲集
  • 『Collapse of the sky』(2010年8月14日)東方アレンジ曲集
  • 『Wall in the presence.』(2010年10月20日)自身のVoによるオリジナル曲集
  • 『Planetary suicide』(2011年1月16日)ボカロ、オリジナル曲集3rd
  • 『Draw the Emotional × AVTechNO!』(2011年2月23日)スプリットEP
  • 『Funny party in the Fog』(2011年3月13日)東方アレンジ曲集(※)
  • 『Ghost and your heart』(2011年12月30日)東方アレンジ曲集(※)
  • 『Seated With Liquor』(2011年12月30日)東方アレンジ曲集(※)、Foreground Eclipseとのスプリットアルバム

()内は発売/発表日

 (※)ちなみに「東方アレンジ曲」とは東方PRJというゲーム・ミュージックのカバー集ということですが、どのようなものか調べきれていません。

 

ボカロ曲の代表作

ここまでは、主にマネタイズを目的とした作品集(アルバム・EP)の制作を中心に話を進めましたが、ゆっぺ氏の創作活動の中心はやはりニコ動上にありました。おそらく制作した楽曲をすぐさまニコ動に投稿し、それらをまとめてアルバム(CD)という形で販売をするという流れだったのでしょう。またこれら楽曲の投稿時期は、ほぼ2009年から2011年に集中しています。

ニコ動上には、ゆっぺ氏自身が作成したプレイリストが公開されていて、主に自身のオリジナル曲がコンパイルされていて、その全貌が掴めるようになっています。(このプレイリストに掲載されていない楽曲も多数ありますが、主にカバー曲であったりします。)

公開マイリスト(写真はその一部) http://www.nicovideo.jp/mylist/6330215

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この中で代表曲と言えるものをいくつかご紹介しておきます。(どちらかというと単なる私見でのセレクトです。)

  • Leia(2011年01月01日投稿):ゆっぺ氏ニコ動における最大のヒット曲

    www.nicovideo.jp

  • Palette(2009年04月23日投稿)

    www.nicovideo.jp

ニコ動では再生回数10万回以上のボカロ曲をVOCALOID殿堂入り」と称してヒットの目安としているようですが、ゆっぺ氏のこのプレイリスト56曲中24曲が殿堂入りを果たしています。さらには再生回数100万回以上はVOCALOID伝説入り」と呼ばれ「Leia」が伝説入りを果たしています。(2017年12月現在)

ボカロシーンにける商業的な成功度合いについて、ゆっぺ氏がどのような位置に居たのか?といった指標は、ニコ動における再生回数以外はなかなか見いだせないので、なんとも評価し辛い(CD販売数などが把握できない)のですが、コンピレーションアルバムでの扱いを見ると、少なくともロック系のボカロ曲ではトップランナーであったことが想像できます。

また、創作した楽曲量は膨大であったことはご理解頂けたと思いますが、ボカロ曲制作以外にもバンド活動や、特に2012年以降はサウンドクリエーター(楽曲提供)としての活動も行っていることを考えると、その創作活動量は想像を絶するものがあります。

 

このエントリでは諸々の事柄が錯綜しますので(サマリ)をご参照下さい。  

(その3)へ続く