親愛なる小林啓様。

さくら学院とBABYMETALの制作スタッフの謎を紐解く

その二面性を自己演出するアグレッシブな鬼才:EHAMIC氏(その2)

その二面性を自己演出するアグレッシブな鬼才:EHAMIC氏(その1) - 親愛なる小林啓様。

(からの続き)

 

ボカロミュージシャンとしてのスタート

2009年には、前述のニコ動に公開された曲を含む2枚のシングルを発表。そして2011年初頭には、アルバム1stアルバム『to-kyo』のリリースに至ります。

このアルバムに収録された曲の制作は、2008年後半〜2009年初頭から始まり、アルバム発表までの制作期間は実に2年以上にも及んだようです。そしてなんと驚くべきはCDと同内容のアナログレーコードとのセットになっていること。

2011年1月10日に公開されたアルバムのダイジェスト動画

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2011年2月20日付けで、同人誌の通販サイトでの取扱いが始まっています。

https://www.toranoana.jp/mailorder/article/04/0010/26/34/040010263489.html

2011年12月22日からは、AmazonでのCD販売が始まっています。

Amazon CAPTCHA

このアルバムに収録されている楽曲の制作方法は更に驚くべきものでした。EHAMIC氏のインタビュー記事及び、このCDの取扱を行っているインディーズ・レーベル(兼音楽スタジオ)の販売サイトでの解説を引用します。

初音ミクの歌声をスタジオで流し、バンドサウンドと合わせてリールテープに収録する。一見アナログな手法だが、その行為が初音ミクを立体的に浮き上がらせる。そしてCDだけでなく、アナログレコード盤もプレスする・・・。そんな注目のアーティストがエハミックさんだ。
(ボカロ PLUS No.2 2012年1月1日徳間書店刊より引用)

ポップ、ロック、ジャズ、ファンク、AOR等、1曲の中で様々な要素が組み合わさる楽曲が特徴で、ボーカロイド作品としては珍しく、生演奏を中心としたアレンジが施されている。『to-kyo』は2枚のEP盤を経てリリースされた1stアルバム。
ピアノ、ギター、ベース、ドラムを中心としたバンドの生演奏をバックに、ボーカロイド初音ミクが日常の様々な光景を歌うアルバム。
ボーカロイドの歌と人間による演奏/コーラスが、複雑に絡み合いながら出来上がっていく楽曲の数々は、感情が入っていないのに表情豊かに展開される。
既存のボーカロイド作品のどれにも似ていない、その特別な世界観は機械(ボーカロイド)と人間の境目を曖昧にしていく。
(Studio LEDA CD SHOPサイトから引用)

ehamiku『to-kyo』(LPレコードとCDのセット) - Studio Leda CD Shop

引用した評では、様々な音楽ジャンルに言及されていますが、ロック(ブルーズ)色やジャズ色等は非常に薄くて、いわゆる中道の音楽。無国籍でデストピアな未来感が漂う不思議な世界観であるように思います。そしてとてつもない完成度。

アメリカン・ポップスの黄金期(1950年代〜70年代)の音楽性にニュアンスが似ているようにも思います。無理やり例えるならバート・バカラックのような。日本で言うと空気公団のような。そんなシンプルでオーソドックスな音楽性。それでいて高度な技術に裏打ちされ、練り上げられたアレンジ。
シングルには、インストのみのカラオケが収録されていて、これを聴くとはっきりわかります。思い浮かんだのはこの曲(打ち込み制作曲ですが)。

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Amazonのサイトに記載されているレーベル名:otsumami recordsは、EHAMIC氏の個人レーベルのようですので、流通はいわゆるインディーズ流通でした。

 

 

ボーカローソンキャンペーンへの楽曲提供とその反応

そんな中、2011年9月に、このようなニュースリリースがありました。(マイナビニュースによる報道)

ローソンは、2011年9月13日(火)より、全国のローソン店舗(「ローソンストア100」除く)で、ヤマハの開発した歌声合成ソフトウェア「VOCALOID(ボーカロイド)」の限定オリジナルグッズや音楽が抽選で当たる「ボーカローソンキャンペーン」を実施する。

ローソン、「VOCALOIDオリジナルグッズ」が当たるキャンペーンを実施 | マイナビニュース

コンビニチェーン大手のローソンが、ヤマハ伊藤園の協賛「ボーカローソンキャンペーン」と銘打ったキャンペーンを開催することを予告するニュースリリースでした。このキャンペーンにおけるテーマソングの一つにEHAMIC氏の提供曲が採用されたのです。

青いコンビニであいましょう

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反響は大きかったようで、2012年末にはキャンペーンで使用された曲を集めたコンピレーションCDまで発売されることになります。このCDでは、EHAMIC氏の提供曲がトップに収録され、このキャンペーンにおける代表曲の扱いであったことが伺えます。

CD「あきこロイドちゃんLOVE♡」CM

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そして、この反響の結果なのでしょう。2011年12月からテレビ放映されたGoogleのCM「Google Chrome×初音ミク」に、EHAMIC氏自身が登場することになります。(楽曲制作は別人)

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・キャプチャ

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このCMに関する論評が記載されたサイトがありました。

2011年Google Chromeは「あなたのウェブを、はじめよう」と題したCMキャンペーンを開始します。このシリーズにはLady GagaやJustin Bieberなど、時代のアイコンが起用され一躍話題に。(中略)

そして来る2011年12月16日Google Chromeは新たなシリーズを発表します。起用されたのはなんと初音ミク!そしてこの作品、なんとフランスのカンヌ国際広告祭で銀賞を受賞、テーマソングである「Tell Your World」はiTunes Storeで総合1位を獲得します。

【Google Chrome5周年】Chrome×初音ミクにみたウェブの可能性

2011年当時の、ボカロを中心としたインターネットを主な活躍の場とする新たなクリエーターが登場した雰囲気を(多分に絵空事的ではあるけど)上手く表現したCMになっていると思います。

更にはテレビ東京のクリエーター応援系番組というのでしょうか、「ドリームクリエーター」「musicるTV」「全力!ネットユーザーつくり場」という番組にも出演し始めます。「つくり場」では準レギュラー扱いだった模様です。

 

 

図書館書士とボカロミュージシャンの二足のワラジ

さて、ここまでボカロミュージシャン・クリエーターとしてのEHAMIC氏の経歴を追ってきましが、もう一つの顔である図書館書士としての経歴に触れておきます。

本人のTwitterではたびたび所属されている図書館で開催される展示展等のイベントが告知されていますので、秘匿された経歴ではないようで、このNGOで運営している図書館で司書をしているようです。

NPO法人 げんきな図書館

げんきな図書館 » 役員/設立趣旨/活動目標/法人概要/法人沿革/活動実績

図書館司書について(文部科学省

司書について:文部科学省

司書資格を取得するには、大学在学中に必要科目を履修して司書資格を取得することも可能ですが、3年間の司書補経験を経て資格習得となる方法もあるらしく、2012年1月の雑誌インタビューでは「図書館で働く」としか書かれていない・・・図書館書士の肩書が明記されていない。つまり司書補だった可能性があります。

この憶測が正しいとすると、2006年3月に大学卒業後、暫く司書補として図書館勤務することで司書資格を取得したのかもしれません。

 

 

さくら学院(科学究明機構ロヂカ?)への楽曲提供

さて、いよいよEHAMIC氏がロヂカへ楽曲提供を開始する2012年となります。

ロヂカへの提供楽曲はこの記事の冒頭でまとめたとおりですが、ロヂカ自体の活動(ライブ、イベント、プロモーション等)へ、直接EHAMIC氏が関係した形跡は無いため、ここはレコード会社(ユニバーサルJ)が主体で進んだと思われるロヂカ売り出しにあたってのプロモーションに絞って話を進めたいと思います。

2012年9月5日頃、東急東横線渋谷駅に、元素記号にちなんだ約100名の「エレメントガールズ」の写真が周期表イメージにデザインされた、どでかいポスターが貼り出されます。エレメントガールズとは、ロヂカ初のシングルに収録される3曲のうちの1曲「IMA ELEMENT with エレメントガールズ」に因んだもののようです。

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このエレメントガールズに選ばれた方のブログが残っていました。これによると2012年9月5日が、ロヂカ初のシングル発売の情報解禁日であったようです。

ameblo.jp

またエレメントガールズの写真を撮影したカメラマンのブログも残っていて、100枚の写真は2時間ほどで3名のカメラマンで撮影されたとのこと。(どうやって選んだんでしょうこんなに・・・そもそも企画意図がよくわからない)

blog.goo.ne.jp

・エレメントガールズ(一部)

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そして、2012年10月27日、28日に行われた「さくら学院祭2012」では、新部活動楽曲が初披露されます。

2012年の学院祭で最も注目と期待を集めたのが、佐藤日向(中等部2年)、磯野莉音(小等部6年)、堀内まり菜(中等部2年)の3人によって9月に発足が発表された科学部=科学究明機構ロヂカ?の初お披露目ステージ。(中略)

11月21日にシングルリリースも決定している、さくら学院 科学部科学究明ロヂカ?「サイエンスガール ▽ サイレンスボーイ」(TBS系テレビ『ランク王国』10・11月度 エンディングテーマ)は、歌詞の中に元素記号や化学用語を巧みに使用した遊び心満載の楽曲。

エレクトロとアナログサウンドがケミストリーを起こすエモーショナルなポップチューンだ。また、この日はさらに、カップリング曲となっている「ユメを解く理論」も披露。

この記事にもあるように、深夜番組ながら人気のテレビ番組のエンディング曲にも選ばれシングルリリースまでのプロモーションは着実に進んでいきました。発売日の直前にはメンバーのこんなインタビューも。

──部の活動を音楽で表現するというところで、科学部ではどんな音楽をやるんだろう?っていう興味もあったと思うんだけど。

MaRi7(堀内まりな)「そうですねえ、歌詞にどんな言葉が使われるのかな?ってすごく楽しみで、最初に「サイエンスガール▽サイレンスボーイ」の仮歌をいただいた時、無機質な感じというか、科学の世界を探検しているような気分になれて、新しい世界を見ることができた感じです。色にすると薄紫色みたいな、寒い感じというか……」

Hi7TA(佐藤日向)「RiNonは初音ミクなどVOCALOIDが大好きだから、仮歌をもらった時にすごく喜んでたよね」

RiNon(磯野莉音「仮歌のヴォーカルがVOCALOIDで作られていたので、それにすごく感動しました!」

(中略)

──レコーディングの時の気分も、さくら学院での時とはまた違った感覚だったんじゃない?

Hi7TA(佐藤日向)「ぜんぜん違いますね。BABYMETALとかの世界観とはまた違うかっこよさが科学部にはあると思うので、そのへんはレコーディングでも出せたかなって思います」

【インタビュー】 さくら学院 科学部 科学究明機構 ロヂカ?|ローチケHMVニュース

シングルの発売日前日の2012年11月20日には、YouTubeにLogicaChannelという特設チャンネルが設けられ、『科学究明放送 ロヂカ学』という番組の放送が開始します。(全4回)

www.youtube.com

この番組と連動する形で2012年11月23日から25日の3日間HMV大宮ロフト、TOWER RECORDS新宿、TOWER RECORDS梅田NU茶屋町の3箇所で、「ロヂカ?labo」と題されたリリースイベントが開催されました。このイベントの様子もYouTube特設チャンネルにて映像が配信されました。

www.youtube.com

以上がプロモーション(イベント)と思しき全てになるのでしょうか?結果論としての評価ですが、なんとも広がりと盛り上がりに欠けるプロモーションとなってしまったようです。

 

結局オリコンのシングルチャートは49位止まり。直後の2013年1月9日にトイズファクトリーからリリースされた、BABYMETALメジャー初シングル「イジメ・ダメ・ゼッタイ」のチャート成績は最高位5位。これと比較しても、商業的には完全に失敗とみていいでしょう。

BABYMETALのメジャーデビューの企画は、シングル発売の2013年1月9日から遡ること1年5ヶ月前の「イジメ・ダメ・ゼッタイ」の完成〜初披露(2011年7月転入式)がスタートであったと見ることもできます。

そこからライブを重ね、慣れないテレビへの露出を行い、ひたすらネットへの楽曲自体の流出を避けて期待感を煽り、徐々に盛り上がっていくBABYMETALの戦略をロヂカの戦略と比較すると面白いかもしれません。

1180 イジメ発表までの道のり2 - 広島のすぅちゃん

1210 イジメ発表までの道のり3 - 広島のすぅちゃん

1220 BABYMETALメジャーデビュー - 広島のすぅちゃん

1230 イジメ発表後の道のり - 広島のすぅちゃん

この戦略の違いはまさに総合プロデューサー(BABYMETALの場合のKOBAMETAL)の手腕・執念・コダワリの違いであろうと思います。そもそもロヂカにはその重責を担った人物がいなかったのでは?という疑念もあるんですが。

 

 

(この項つづく)