親愛なる小林啓様。

さくら学院とBABYMETALの制作スタッフの謎を紐解く

その二面性を自己演出するアグレッシブな鬼才:EHAMIC氏(その1)

今回は、さくら学院の部活動ユニット科学究明機構ロヂカ?」(以降:ロヂカ)で作詞・作曲・編曲を担当されたエハミック(EHAMIC)氏を取り上げます。

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 エハミック EHAMIC - YouTube

 

 

サイエンスガール ▽ サイレンスボーイ

まずは、ロヂカの1stCDシングル曲である「サイエンスガール ▽ サイレンスボーイ」をシングル発売元であるUNIVERSAL MUSIC JAPAN公式YouTubeチャンネルで聴いてみましょう。(2012/10/29 公開)

www.youtube.com

曲のフルレングスはさくら学院の公式ニコ動チャンネルで聴くことができます。

www.nicovideo.jp

一聴して楽曲の優秀さというか、リズムアレンジのアグレッシブさと、それでいて練り上げられた感のあるアレンジに驚かされました。

CDシングルに収録されているカラオケバージョンのミックスがシンセベースが強調されて、これまた凄いのです。一聴の価値ありますよ。

楽曲のクオリティとしては、同時期の同じ部活道ユニット重音部(BABYMETAL)の楽曲と肩を並べるクオリティであると個人的には思っています。

www.youtube.com

このクオリティの秘密は、EHAMIC氏本人によるこの解説で明らかにされてるように思います。

科学部への楽曲提供は、昨今、日本の音楽業界で模倣が横行している「エレクトロ・サウンド」に対して真っ向立ち向かうものとなり、本収録曲は戦いの記録となった作品です。

具体的には、「打ち込み」と「ケロケロ声」の二つをタブーとし、生演奏を主体にしたアレンジをさせていただきました。

ただし、科学のイメージを想起させるデジタル音ははずせないということになり、シンセサイザーもひとつひとつつまみを回し、納得いくまで何度も弾きました。近年のポップスでは珍しい作り方かもしれません。

ユニットのデビュー曲となった『サイエンスガール▽サイレンスボーイ』は生演奏の緊張感がダイレクトに露呈した1曲です。

(中略)

どの曲も本当に自由に制作させていただき、さくら学院の先生方には感謝の念に堪えません。ぜひアナログの質感が残るグルーヴと、3人のクールかつ可愛らしいハーモニーをお楽しみください。

www.barks.jp

なんとこれが生演奏。非DTM制作(シーケンサー未使用)ということでしょうか?そしてなんとも気になるのは、「戦いの記録となった作品」という記述。

シングル発表当時、音楽ジャーナリズムでの評価も高かったようです。

さくら学院の新たな部活動(=サブユニット)が開始。文字通り科学をテーマにしており、近未来的なエレクトロ・サウンドを披露。本隊も他の部活動でもお目にかかれない体温の低めな楽曲がめちゃくちゃかっこいい。

Perfume直系のロボティックなダンスも素晴らしく、このユニットはかなり「当たり」なのではないかと。

コンセプトを立てて、それに合わせてしかとクオリティの高いものを作り上げる技術に唸らされる。

サイエンスガール▽サイレンスボーイ | Rolling Stone(ローリングストーン) 日本版

EHAMIC氏によるロヂカへの楽曲提供は、発表された全5曲中3曲となり。2015〜16年度毎に発表されたさくら学院のアルバムにてボーカルが再録された2曲も、EHAMIC氏制作です。

提供楽曲とリリース推移をまとめてみます。
(リリース日、リリース曲、レーベル)

提供楽曲(科学究明機構ロヂカ?)

①サイエンスガール ▽ サイレンスボーイ(作詞・作曲・編曲)
②デルタ(作詞・作曲・編曲)
③Welcome to My Computer(作詞・作曲・編曲)
 

2012年11月21日
科学究明機構ロヂカ? サイエンスガール ▽ サイレンスボーイ(シングル)
ユニバーサルジャパン:3曲中1曲(①)

2013年3月13日
さくら学院 2012年度〜My Generation〜(アルバム)
ユニバーサルジャパン:2曲(①②)

2014年3月12日
さくら学院 2013年度 〜絆〜(アルバム)
ユニバーサルミュージック :1曲(③)

2016年3月3日
さくら学院 2015年度 〜キラメキの雫〜(アルバム)
アミューズ: 1曲(①)再録

2017年3月3日
さくら学院 2016年度 〜約束〜(アルバム)
アミューズ: 1曲(②)再録

2012年度のアルバムには2曲も収録され、シングルではタイトル曲以外に2曲も収録されたEP(Extended Play)仕様。それもメジャーレーベルからの発売。

各年度のアルバムに2曲収録された例は、他の部活動ユニット(クッキング部、バトン部)でもありますが、何れもシングルは未発表もしくはインディーズ流通でした。

各年度のアルバムに1曲づつしか収録されず、シングルも当初はインディーズ流通であった重音部(BABYMETAL)以上の好待遇になってると言っていいと思います。

これだけ見ても、ロヂカの活動当初は相当に売り出しに力を入れられたということがわかります。

 

 

EHAMIC氏のプロフィール

では、いくつか公表されているプロフィールなどから、EHAMIC氏の経歴を順を追って紐解いていきましょう。

EHAMIC [エハミック] 図書館司書。シンガーソングライター。

音声合成ソフトVOCALOIDを使ったLP盤を制作するなど、前衛的な表現活動でも注目されているアーティスト。

TVCM「Google Chrome×初音ミクへの出演やコンビニエンスストアLAWSONのイメージソング提供をきっかけにメディアへの露出を始め、アーティスト活動以外に作家やタレントとしての顔をもつ。

各所への楽曲提供も行っており、アナログとデジタルを融合させた、繊細かつ大胆な楽曲が特徴。

さくら学院アルバムライナーノーツより引用)

さくら学院 - 『さくら学院 2015年度 ~キラメキの雫~』ライナーノーツ

本名は江原 幹人。アーティスト名である「エハミック」は本名をもじっている。筑波大学出身で、軽音楽バンドサークル「TOJO K-ON」に所属していた。

繊細で大胆な作風はアーティストやボカロPからの評価が非常に高く、玄人受けする作り手である。動画サイトを活動のメインとしていないため、インターネット未公開の音源が多数ある。

さくら学院桃知みなみ岸田メル、スルースキルズ、赤マルダッシュ☆、HGS等への楽曲提供もしている。また、料理が趣味であり、自ら料理を作る動画も投稿している。

初音ミクwikiより抜粋引用)

初音ミク Wiki - EHAMIC

中学入学時にメキシコから帰国公共図書館に勤務しながらボカロPさんの活動をしている。

初音ミクとのプロジェクト名は、エハ・ミク(ehamiku)、鈴音リン、レンとのプロジェクト名では、エハ・ミネ(ehamine)を名乗る。

チョコレート(ビター)が好きなので毎日食べている。

(ボカロ PLUS No.2 インタビュー記事より引用)

 

 

メキシコにて、ヤ◯ハの現地駐在員の子息として誕生

 Wikipediaに記載されている出身地がメキシコとなっていて、どういうことなんだろう?と不思議だったのですが、このインタビュー記事でその理由がわかりました。

ボーカロイドに出会ったのは、楽器関係の仕事をやっている父親から初音ミクを紹介されたのがそもそものきっかけだった。

(ボカロ PLUS No.2 インタビュー記事より引用)

父親がメキシコに拠点を持っている楽器メーカーに勤務していて、それもボーカロイドの開発元(そう、ヤ◯ハ)なんですね。

おそらくメキシコの現地法人に出向(海外勤務)されていて、その滞在中に誕生したということで間違いないようです。

生年については確実な情報はないのですが、いくつかの情報から推測するに1982年生まれ。現在(2017年)35歳になるようです。

また同じインタビューではこんな発言もされています。

EHAMIC 作曲を始めたきっかけは、物心ついたときには絶対音感があったので、耳に入った曲をピアノで弾いているうちに、自分でも曲を作ってみようと思うようになりました。

また、幼少の頃に読んだモーツァルトの伝記に『5歳の頃に書いた曲が存在する』という記述を見て、『同じ歳の子が!』と触発されたのが何よりも大きいきっかけです。

(ボカロ PLUS No.2 インタビュー記事より引用)

ヤ◯ハは、1950年代後半から海外進出を試みていて、その大きな目的はピアノの海外拡販。そして拡販の手段として音楽教室事業を現地で展開していた様です。メキシコはその先駆けともなった国のようです。

ブランドと歴史 - 企業情報 - ヤマハ株式会社

EHAMIC氏も幼いころから現地のピアノ教室に通ったのでしょう。また幼年からのピアノ教育が絶対音感の発掘に繋がったものとも想像できます。

そして、前述のプロフィールにあるように、中学入学前の12歳、1994年に日本に帰国。ヤ◯ハ本拠である静岡県で中学時代を過ごし、その後沼津高専(国立沼津工業高等専門学校制御情報工学科)に進学したようです。(高専への進学はご自身のFacebookにて公開されています)

www.numazu-ct.ac.jp

高専への進学理由は不明ですが、後にロヂカへかかわるきっかけの一つになったと述べれています。(理系出身のクリエーターというのが採用の理由の一つだったようです)

 

 

大学での音声処理研究、軽音サークルでのバンド結成

高専(5年制)を卒業した20歳。2002年に筑波大に入学し、システム情報工学、中でも音声や音響のコンピューター処理を専攻したようです。

EHAMIC 私は学士論文のテーマとして歌声波形のデータ解析をやっていた経験もあり、近しいものがあるボーカロイドの技術には前々から興味がありました

(ボカロ PLUS No.2 インタビュー記事より引用)

とのインタビュー発言もあることから、音声処理研究に強い「マルチメディア研究室」に所属していた様です。

マルチメディア研究室 | 筑波大学

 

学業以外では、軽音楽サークルに所属し、そこで2004年にバンド「キャシーメガネ」を結成して活動を開始しています。

このバンドはEHAMIC氏が大学卒業後も定期的に集まり現在も活動を行っているようです。

2014年にはインディーズ・レーベル制作(もしくは自主制作)でのアルバムを発表し、配信のみですがインディーズ流通も行っています。(ニューキャシーメガネ名義:iTunesで購入可能/Apple Musicで聴取可能です。)

勉強

勉強

  • ニューキャシーメガネ
  • ワールド
  • ¥200

アルバムを制作したと思われるインディーズ・レーベル(吉祥寺の音楽スタジオ)による解説です。

2004年、筑波大学の軽音楽バンドサークル「TOJO K-ON」内で結成。現在はプロ作曲家でもあるEHAMIC氏が在籍していることで知られる。

当時キャンパスでは、その楽曲完成度が話題となり、知る人ぞ知るオリジナルバンドとしてローカルな注目を浴びた

メンバーの大学卒業後は同窓会感覚で年1回ほど集まり、不定期に活動を続けている。結成10年の記念として、2014年にアルバム「ニューキャシーメガネ」を発表。基本メンバーは6名。

Vo. AYUMI、Cho. MOTOHASE、Gt. BONDI、Ba. JUN、Dr. HANAYOSHI、Key. EHAMIC

ニューキャシーメガネ『ニューキャシーメガネ』 - Studio Leda CD Shop

Soundcloudでは一部音源を聴くことができます。

soundcloud.com

筑波大の軽音楽サークル(TOJO K-ON)のサイトでも、活動の一部履歴を追うことができます。また2006年3月の「追い出しコンサート」にバンド名が記載されていることから、EHAMIC氏の卒業年も2006年であることが推測できます。

過去に活動していたバンド
おつまみヨーゼル
Vo. EHAMICK / Gt. KAWA / Gt. イケダ / Ba. パネリスト / Dr. はなょし
オリジナル。

キャシーメガネ
Gt.&Vo. あゆみ / Ba.&Vo. パネリスト / Key. EHAMICK / Dr. はなょし
LocalBus のコピーと オリジナル。

pastband - BAND - TOJO K-ON

 

 

ボーカロイドとの出会い

EHAMIC氏が2006年3月に筑波大学を卒業した後の活動については、詳細は追いきれていないのですが、2007年に発表されたボーカロイド(正確には初音ミクを搭載したVOCALOID2)について、EHAMIC氏はこのように語っています。

ボーカロイドに出会ったのは、楽器関係の仕事をやっている父親から初音ミクを紹介されたのがそもそものきっかけだった。

私は学士論文のテーマとして歌声波形のデータ解析をやっていた経験もあり、近しいものがあるボーカロイドの技術には前々から興味がありました。

(ボカロ PLUS No.2 インタビュー記事より引用)

ヤ◯ハにおけるVOCALOIDの研究開発プロジェクトは2000年代初頭から行われ、VOCALOID1は2003年に発表されており、前記インタビューの父親から紹介された時期、EHAMIC氏が興味を持った時期は特定できません。

しかし、大学卒業から約3年後の2009年8月、VOCALOIDを使用して制作された楽曲がニコニコ動画に公開されます。

2009/08/23

こんばんわどうもやじまです
今日はやじまの同期だった変態で天才な作詞と作曲のヴォーカリストかつキーボーディスト(今回は歌ってないけど)がニコ動デビューしてたのでひっそり宣伝します 
「1000円で死ねる」
曲名はスピリタスが1000円だったのが由来だったはずがそんなんは関係なくいい曲です 是非共二の古いライブ映像にもあるはず 気に入ったらコメントでもしてあげてください「4年前からあぶってた」とか

ehamiku - TOJO K-ON日記

おそらくプロの音楽家としての初めて発表された曲”Possible To Die For"です。

open.spotify.com

 

 

 (この項つづく)

 その二面性を自己演出するアグレッシブな鬼才:EHAMIC氏(その2) - 親愛なる小林啓様。